施設沿革

群馬大学医学部附属薬剤耐性菌実験施設は昭和53年8月に正式に発足した。その前身は、昭和48年4月に文部省より予算の配布を受けてスタートした耐性菌保存センターである。薬剤耐性菌の研究は、我が国で薬の効かない赤痢が流行した昭和30年に遡る。当時、群馬大学医学部微生物学教室で、如何なるしくみで赤痢菌が薬剤に耐性化するのか、薬剤耐性菌の遺伝学的研究が精力的に取組まれた。それが世界にさきがけての我が国でのR因子(Rプラスミド)の発見につながった。

薬剤耐性化の問題は、その後、黄色ブドウ球菌、緑膿菌、その他、日和見感染症の種々の原因菌に及んでおり、我が国ではこれ等の耐性菌それぞれについて研究会が組織されてきた。これらの研究会には、臨床医、基礎細菌学者、薬学者などの各分野の研究者が参加し、薬剤耐性菌をめぐる諸問題が検討された。病巣由来細菌の実体は、研究会を通じ全国の病院から集められた分離細菌の薬剤耐性に関する疫学調査、遺伝学、生化学的研究により、着々と明らかにされてきた。この研究成果は、基礎研究としてはもとより、感染症の化学療法のありかた、より有効な抗菌剤の開発に資するものであり、重要性が認められ、先に述べた経緯を経て、現在の施設へと発展した。